経済の「極限(エクストリーム)」を体現している9つの街・地域の観察を通して、経済理論が決して示してくれない未来の経済の様子を考察した経済学者による著作です。
近年のビジネスやアカデミックの世界は計量一辺倒で、わざわざ計量化しなくてもよいことすら計量して捉えることがイケているとされていると感じることがあります。
本書を読んで、理論(モデル)では決して捉えることができない現実世界の様子を描き出す、文化人類学的な観察のパワーをものすごく感じました。
よく考えてみれば、経済理論って過去の観察から生まれているので、既に起きたことは説明できても、これから起きること(未来)は決してズバリと当てることはできないのですよね。
日本からも秋田県が、「超高齢社会」の極限の場所として取り上げられています。
個人的には、インドネシアのアチェ、ヨルダンのザータリ難民キャンプ、コンゴ民主共和国のキンサシャの事例から描かれる、インフォーマル経済の力強さを初めて認識しました。
日本でも2018年の世界労働機関(ILO)の報告によると、全就業者のうち約18.3%がインフォーマル経済に従事しているとのことですが、この数字はいわゆる非正規雇用の割合(2018年だと総務省『労働力調査』で38.3%)と違うようなので、どういう内容の職に就いている人の割合なのか気になっています。